過敏性腸症候群(IBS)とは
過敏性腸症候群(IBS)は、腹痛や便通異常(下痢・便秘)が繰り返されるものの、胃カメラ検査や大腸カメラ検査、血液検査でも原因となる疾患が明確に発見されない疾患です。
便通異常により「便秘型(IBS-C)」「下痢型(IBS-D)」「混合型(IBS-M)」「分類不能(IBS-U)」に分類されます。
過敏性腸症候群は、命に関わる疾患ではないものの、症状のコントロールが難しく、生活や仕事に影響を及ぼすことがあります。
不安や抑うつ、不眠症、めまい、肩こり、頭痛、喉の詰まり感などお腹以外の症状を伴うこともあり、ストレスとも関係が深い疾患です。
過敏性腸症候群の原因
過敏性腸症候群(IBS)の具体的な原因はまだ解明されていません。
細菌やウイルスによる感染性腸炎にかかった後にIBSになりやすいことが知られており、腸粘膜の炎症や腸内細菌、粘膜透過性亢進が関与しているのではないかと考えられています。また、ストレス、神経伝達物、ホルモン、遺伝的要因なども関与していると考えられていますが未だにはっきりとした原因は分かっていません。
過敏性腸症候群の病型
便秘型IBS(IBS-C)
排便頻度が少なく、硬い便やコロコロした便が良くみられる。また、排便に伴い腹痛が生じる場合があります。ストレスが原因で生じやすい病型です。
下痢型IBS(IBS-D)
軟便や泥状便、水様便(水下痢)が良くみられる。激しい腹痛を伴う場合があります。便秘型と同様、ストレスが原因となりやすい病型です。
混合型IBS(IBS-M)
便秘と下痢が交互に現れる病型です。
分類不能型IBS
便秘型、下痢型、混合型のどれにも明確に該当しない症状がみられる病型です。
これらの病型は患者さんの症状に基づいて診断され、治療方針を決定する際の参考となります。
過敏性腸症候群の診断
便秘や下痢などが生じる潰瘍性大腸炎や大腸がんなどの器質的な疾患が隠れていないかを確認するため、まずは大腸カメラ検査を受けていただくことがあります。同様に、甲状腺や膵臓に関連する疾患でも似たような症状が発生することがあるため、血液検査や腹部超音波検査なども行っていただくことがあります。
過敏性腸症候群の
国際的な診断基準
ROMA Ⅳ基準
直近3ヶ月以内において、1週間のうちに腹痛が1日以上あり、かつ以下の項目に2つ以上当てはまっている場合。
(1)排便に関連した症状がある
(2)排便頻度の変化を伴う
(3)便の形状の変化を伴う
※少なくとも診断の6か月以上前に症状が出現している必要がある
過敏性腸症候群の治療と予防
薬物療法
便秘型、下痢型、混合型などの病型に合わせた、治療法を行うことが重要です。
また、いずれの病型も整腸剤(乳酸菌、ビフィズス菌、酪酸菌など)が有効であると報告されています。
主に症状や病型に合わせて、消化管運動機能調整薬、下痢止め、セロトニン受容体拮抗薬、抗コリン薬などの薬剤を処方します。漢方薬を併用する場合もあります。
薬物療法の効果が現れるまで2カ月程度を要する場合もありますが、しっかりと治療を継続することが重要です。
食習慣の改善
症状を引き起こしやすい食品を控えることが望ましいです。(繊維質な食品、香辛料、カフェイン、アルコール、乳製品、加工食品など)
特定の食品を摂取することで症状が現れやすくなる方もいるため、その場合は原因となる食品を避ける必要があります。
その他には、食べ過ぎや飲み過ぎ、刺激物には気をつけ、3食規則正しく摂ることが体と消化器官の安定につながります。ただし、厳格な食事制限はストレスを引き起こし逆効果となるため、楽しみながら美味しい食事を心がけましょう。
生活習慣の改善
規則正しい生活を心がけ、十分な休息をとる必要があります。健康な排便ペースを取り戻すには、便意を我慢せず、特に朝食後には便意の有無にかかわらずトイレを訪れる習慣を身につけることが大切です。また、喫煙者は禁煙を検討することが望ましいです。