便秘とは
便秘は、腸の運動が不規則で、十分な量かつ快適に排便できない状態を指します。毎日便通があるにも関わらず、排便の量が少なく残便感を感じる方や、2日に1度の排便で快適に過ごせる体質の方もいます。食物が大腸を通る速度が遅くなり、便が硬くなることが一般的です。便秘の症状には腹痛、膨満感、排便の困難さが含まれます。
便秘の症状があっても、それが日常的な状態として軽視されたり、市販薬を使用してかえって悪化させてしまうケースがよく見られます。便秘は適切な治療を受ければ解消することができます。慢性的な便秘を無視すると、痔や大腸疾患の発症リスクが上昇する他、虚血性心疾患や脳卒中、慢性腎臓病の発症リスクが高まり、寿命にも影響が出るとする報告もみられるようになってきています。明また、他の疾患が便秘の原因となっている可能性も考えられますので、慢性的な便秘でお悩みの方は、ご相談ください。
便秘の症状について
- 排便の回数が少ない
- 便が硬い
- 排便時、いきむ必要がある
- 排便後もすっきりしない
- 便の形や色が異なる
- 小さい便しか出ない
- 下剤なしでは排便が難しい
- 便秘と下痢が交互に繰り返す
- 下腹部に膨満感や不快感がある
便秘の状態になると、主に上記のような症状が見られます。
便秘で悩んでいる方は多いですが、大腸がんなどが原因で生じる場合もあるため、便秘の原因となりうる危険な疾患を除外した上で適切な治療を行うことが重要です。
特に慢性的な便秘症状がある場合は、早めに消化器内科を受診することをおすすめいたします。
便形状スケール
「ブリストル便形状スケール」は、便の状態を表す国際的な基準です。1や2の硬い便は便秘の兆候であり、3〜5の適切な硬さの便を維持することが良い排便状態とされています。
便秘の主な原因
便秘は、腸の機能に起因する機能性便秘と、腸の疾患による器質性便秘に区分されます。多くが機能性便秘ですが、器質性便秘の場合は迅速な治療が必要なこともあります。便秘の症状が続く場合は、必ず消化器科を受診してください。
機能性便秘は、便の生成や排便メカニズムに問題が生じることにより発生します。直腸性、弛緩性、けいれん性の3つに分類され、それぞれ異なる治療法が適用されます。直腸性便秘は直腸に便が滞留し、弛緩性便秘は大腸の機能低下が主な原因です。けいれん性便秘は大腸の過剰な緊張により引き起こされます。
器質性便秘は、大腸ポリープ、大腸がん、炎症、腸の狭窄や閉塞、癒着など、幅広い腸疾患が原因です。これらの場合は、原因疾患に対する適切な治療を早期に開始する必要があります。
便秘の診断・検査
便秘の検査では、まずは問診と身体検査により、生活習慣や症状の詳細を把握します。その後、必要に応じて血液検査、大腸カメラ検査、レントゲン検査、超音波検査などが行われ、炎症や異常な腫れ、腫瘍などの有無を確認し、潜在的な疾患が隠れていないかを確認します。また、適宜便の検査も実施し、便中に血液成分がふくまれていないかなどを調べます。より専門的な施設では必要に応じて、腸の運動を評価する検査や神経学的な検査も行われることがあります。これらの検査を通じて、正確な診断と適切な治療が行われます。
当院の大腸カメラ検査では、日本消化器内視鏡学会内視鏡専門医である医師がすべての検査を実施しており、苦痛の少ない検査を行っています。
検査に不安をお持ちの方も安心してご相談ください。
便秘の治療
器質性便秘の場合、原因疾患の治療が重要です。機能性便秘の治療は、食事改善や生活習慣の見直しが基本です。
食物繊維を豊富に含む食品摂取や十分な水分摂取、規則正しい生活リズムが必要です。生活習慣の改善を行っても便秘が良くならない場合は、下剤の使用を検討することになります。
症状に応じて漢方薬の使用も可能です。患者様の状態や体質に合わせて処方し、再診時にお話を伺って処方を微調整し、最適な治療を提供しています。
生活習慣の改善
便秘解消には食生活以外の、適度な運動や十分な水分摂取、規則正しい生活リズムなどの生活習慣の改善も効果的です。
- 便意を感じたら、
すぐにトイレに行くよう心がける - 腹部を冷やさないように気をつける
- 水分を十分に摂る
- 週に3回以上、散歩などの軽い運動を行う
- 十分な睡眠と休息を確保する
- 趣味などで上手にストレスを解消する
食事の注意点
- 規則正しく3度の食事を摂る
- 食物繊維を積極的に取り入れる
- 適度な脂肪も摂取する
- 腸内細菌叢を整えるためにヨーグルトや漬物などで乳酸菌を摂る
ただし、ダイエットで食事の量を極端に減らし、脂肪の摂取を制限しすぎると便秘が起こりやすくなります。適切な栄養摂取を心掛けましょう。