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大腸カメラの精度:ADR(腺腫発見率)と大腸がん予防の関係

大腸がんを早期発見・予防するためには、大腸内視鏡検査を受けることが重要です。その中でも、**ADR(Adenoma Detection Rate:腺腫発見率)**は、内視鏡医の検査精度を示す指標として注目されています。今回は、ADRと大腸がんのリスクとの関係について、医学的な研究をもとにお伝えします。


1. ADRとは?

**ADR(腺腫発見率)**とは、内視鏡検査を受けた患者のうち、腺腫(がん化のリスクがあるポリープ)を発見できた割合を示す指標です。

例えば、100人の患者のうち30人に腺腫が見つかった場合、ADRは30%となります。

ADRが高いほど、医師が腺腫を見落とさずに発見できていることを意味し、大腸がんの予防効果が高いことが示されています。


2. ADRが高いと大腸がんリスクが低下する

米国で行われた大規模研究(Corley DA, et al. N Engl J Med. 2014)では、ADRが1%向上するごとに、大腸がんの発生率が3%、死亡率が5%低下することが報告されています。

また、同研究では、ADRの低い医師と高い医師を比較したところ、ADRが高い医師の検査を受けた患者は、大腸がんの発生率・死亡率が大幅に低下することが示されました。

具体的には、ADRが最も低いグループ(約7~19%)の患者と比較し、ADRが最も高いグループ(約33~52%)の患者では、大腸がんリスクが約48%低下していました。

このことから、ADRの高い医師による内視鏡検査を受けることが、大腸がんの発生を抑える上で重要な要素となることが分かります。


3. 内視鏡医のADR目標値(ASGEガイドライン)

米国消化器内視鏡学会(ASGE)のガイドラインでは、50歳以上のスクリーニング対象者に対して、ADRの目標値は以下の通りとされています(Rex DK, et al. Am J Gastroenterol. 2015)。

  • 男性のADR目標:30%以上
  • 女性のADR目標:20%以上

この基準を満たしている医師の内視鏡検査を受けることで、より精度の高い検査が期待できます。


4. まとめ:ADRの高い医師の内視鏡検査を受けることが大腸がん予防につながる

大腸がんを早期発見・予防するためには、大腸内視鏡検査を受けることが大切です。しかし、同じ内視鏡検査でも、医師の技術やADRによって検査の精度が大きく変わることが分かっています。

ADRが高い医師の検査を受けることで、大腸がんの発生リスクを大幅に低減できる。
・ADRが1%向上するごとに、大腸がんの発生が3%、死亡率が5%低下する(Corley DA, et al. 2014)。
・ASGEガイドラインでは、男性30%以上・女性20%以上のADRが推奨されている(Rex DK, et al. 2015)。

ご自身やご家族の健康を守るために、大腸内視鏡検査をぜひご検討ください。


参考文献

  1. Corley DA, et al. Adenoma Detection Rate and Risk of Colorectal Cancer and Death. N Engl J Med. 2014.
  2. Rex DK, et al. Colorectal Adenoma Detection and Advanced Neoplasia Yield at Screening Colonoscopy. Am J Gastroenterol. 2015.