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高血圧と大腸がんの関係:高血圧の方は大腸カメラ検査を受けるべきか

一見なんの関係もないように思える高血圧と大腸がん。しかしながら、近年の研究結果から、高血圧の患者さんは、血圧が正常の人に比べて大腸がん発症のリスクが高いことが指摘されるようになっています。今回は、高血圧と大腸がんの関係について詳しく見ていきましょう。

研究結果の概要

高血圧と大腸がんのリスクに関する研究は国内外で行われており、いくつかの重要なデータが報告されています。

国内の研究: 2021年に発表された全国的な疫学データベースを用いた研究では、未治療の高血圧が大腸がんの発症リスクを増加させることが示されました。この研究では、2,220,112人の成人が対象となり、血圧の正常なグループ(収縮期血圧120 mmHg未満および拡張期血圧80 mmHg未満)と比較して、高血圧のステージ2(収縮期血圧140 mmHg以上または拡張期血圧90 mmHg以上)のグループでは大腸がん発症リスクが17%高いことが確認されました。さらに、性別毎の解析によると、男性ではステージ1(収縮期血圧130-139 mmHgまたは拡張期血圧80-89 mmHg)の高血圧で発症リスクが10%高く、ステージ2では24%上昇していました。一方で女性では血圧が上昇しても発症リスクは変わりませんでした【1】。

海外の研究:

イギリスのGeneral Practice Research Databaseを用いたコホート研究では、アンジオテンシン受容体ブロッカー(ARB)の使用が大腸がんのリスクと関連していることが示されました。この研究によると、ARB使用者の大腸がん発症リスクは正常血圧の人に比べて14%高いことが報告されています。この研究における正常血圧の定義は、収縮期血圧が140 mmHg未満かつ拡張期血圧が90 mmHg未満です【2】。

  • 欧州で行われた大規模な前向き観察研究(EPIC)では、高血圧が大腸がんの発症リスクを15%高めることが示されました【3】。具体的には、高血圧が大腸がんのリスクを約15%高めると報告されています【3】。

高血圧が大腸がんのリスクを高める理由

高血圧が大腸がんのリスクを高める理由として考えられている機序はいくつかありますが、これらは仮説に基づくものであり、因果関係が証明されているわけではありません。主な理由の一つは、血圧の上昇が体内の慢性的な炎症を引き起こし、これががんの発生リスクを高めると考えられています。また、高血圧は動脈硬化を進行させ、これが血流の変化や組織の酸素供給不足を引き起こし、がんの発生を促進する可能性があります【2】。

高血圧の患者さんは大腸カメラを受けるべきか?

個人的には40歳以上で今まで一度も大腸カメラ検査を受けたことがないのであれば、大腸カメラ検査を受けて頂くことをお勧めしますが、是非とも受けて頂きたいのは、水戸市でも40歳以上が対象となっている便潜血による大腸がん検診です。
便潜血検査は、目には見えないレベルの便に混じった血液を検出することで「大腸がんによる死亡率を減少させることが科学的に証明された」有効な検診です【4】。症状が出る前に病変を早期発見することで、大腸がんで亡くなることを防ぐことができます。
そして便潜血検査が陽性(要精密検査)となれば、必ず大腸カメラ検査を受けて頂きたいと思います。特に、高血圧のステージが進んでいる場合や、他のリスク要因(肥満、飲酒、喫煙など)がある場合は、大腸がんの早期発見が重要です。大腸カメラ検査は、大腸がんの前段階であるポリープの発見・除去が可能であり、がんの予防にも寄与します。

大腸カメラは辛いイメージがある方もいらっしゃると思いますが、当院においては鎮静剤を用いてウトウトした状態で検査をすることで、苦痛を抑えた検査をすることが可能です。

また、フジフィルム社の最新型高精度の内視鏡を使用し、検査施行医はがん専門施設で豊富な経験を有する医師が担当することで精度の高い検査が可能です。

当院の大腸カメラについて詳しくはこちら

まとめ

高血圧は大腸がんのリスクを高める可能性があるため、定期的な健康チェックとともに、大腸がん検診も受けて頂きたいと思います。早期発見・早期治療が、大腸がんの鍵となります。自身の健康を守るためにも、適切な検査と予防を心がけましょう。

引用文献

  1. 1. Kaneko, H., et al. "Untreated Hypertension and Subsequent Incidence of Colorectal Cancer: Analysis of a Nationwide Epidemiological Database." Journal of the American Heart Association, vol. 10, 2021, DOI: 10.1161/JAHA.121.022479.
  2. 2. Bhaskaran, K., et al. "Long-term use of antihypertensive medications, hypertension and colorectal cancer risk and mortality: a prospective cohort study." British Journal of Cancer, vol. 107, no. 1, 2012, pp. 174-179, DOI: 10.1038/bjc.2012.271.
  3. 3. Xuan, K., et al. "The association between hypertension and colorectal cancer: a meta-analysis of observational studies." European Journal of Cancer Prevention, vol. 30, no. 6, 2021, pp. 481-488, DOI: 10.1097/CEJ.0000000000000691.
  4. 4. 厚生労働省, 2003年. 「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン」. 平成16年度厚生労働省がん研究助成金「がん検診の適切な方法とその評価法の確立に関する研究」班.