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当院での大腸カメラの腸管洗浄剤について

大腸内視鏡検査(大腸カメラ)において、適切な前処置(腸管洗浄)は検査精度を左右する重要な要素です。当院では、患者様の状態や嗜好に応じて最適な腸管洗浄剤を選択しております。

PEG(Polyethylene Glycol)製剤

PEG製剤は、1980年代から使用されている歴史のある腸管洗浄剤で、安全性が確立されています。大きく以下の2種類に分類されます。

1. 高容量PEG(ニフレック・ムーベン)

- 安全性が高く、腎不全・透析・電解質異常のある患者様にも使用可能。
- 大容量(約2L)を服用する必要があり、飲みにくさを感じる方も。
- 腸管内で水分を保持し、緩やかに便を軟化・排泄を促すため、消化器系への刺激が少なく、吐き気や嘔吐のリスクが低い。

2. 低容量PEG + アスコルビン酸(モビプレップ)

- 味の忍容性が高いため、比較的飲みやすい。
- アスコルビン酸の蠕動亢進作用により、前処置時間を短縮。
- 副作用(吐き気・嘔吐)が少なく、安全性は高容量PEGと同等。

PEG製剤は、どちらも腸管洗浄力が同等であり、患者様の負担を考慮すると、飲みやすさの点でモビプレップの方がメリットが大きいと考えられます。

OSS(Oral Sodium Sulfate, サルプレップ)

サルプレップは、2019年に開発され、2021年に日本で発売された新しい腸管洗浄剤です。

- 有効成分:硫酸マグネシウム・硫酸ナトリウム・硫酸カリウム。
- 作用機序:硫酸塩が腸管内で急激な浸透圧変化を引き起こし、大量の水分を腸管に引き込むことで強力な下剤効果を発揮。
- 洗浄力:PEG製剤と比較して、ポリープ検出率(PDR)およびアデノーマ検出率(ADR)が高いとするメタアナリシスが報告されている。
- 投与方法:同日投与(1回)と分割投与の両方が可能。
- 副作用:腸管の神経を刺激しやすく、吐き気・嘔吐のリスクがやや高い
- 使用制限重度の腎機能障害(eGFR < 30 mL/min)の方には禁忌。

当院での選択基準

当院では、服用量が少なく、洗浄力が高く、精度の高い検査が可能であるという観点から、サルプレップを第一選択としています。

ただし、

- サルプレップの服用が難しい方
- 高度の腎機能障害がある方

には、モビプレップを使用しております。

患者様一人ひとりに適した前処置を選択し、より精度の高い検査を提供できるよう努めてまいります。ご不明な点がございましたら、当院スタッフまでお気軽にご相談ください。