大腸ポリープ切除で大腸がんは予防できる?研究結果から見る効果
大腸ポリープは放置するとがん化する可能性があるため、内視鏡検査で早期に発見し、切除することが大腸がんの予防につながります。今回は、過去の研究結果をもとに、ポリープ切除による大腸がん抑制効果について解説します。
1. National Polyp Study(NPS):ポリープ切除で大腸がんリスクが最大90%減少
**National Polyp Study(NPS)**は、米国で行われた大規模な研究で、大腸ポリープを内視鏡で切除すると、大腸がんの発生リスクがどの程度低下するかを調べました。
NPSの主な結果
- ・ポリープを切除することで、大腸がんの発生率が76~90%減少
- ・平均5.9年間の追跡調査で、予測される発生率よりも大幅に低下
この結果は、大腸ポリープの段階で切除することが、大腸がんの予防に非常に効果的であることを示しています【1】。
2. Japan Polyp Study(JPS):日本の研究でも同様の結果が確認
日本で実施された**Japan Polyp Study(JPS)**でも、内視鏡的ポリープ切除によって大腸がんの発生率が大幅に低下することが確認されました。
JPSの主な結果
- ・ポリープを切除した人は、切除しなかった場合と比べて大腸がんの発生が約86%減少
- ・研究期間中、女性では大腸がんの発症例がゼロ
この結果は、日本人においてもポリープ切除が大腸がんの予防に有効であることを示しており、内視鏡検査の重要性を裏付けるものです【2】。
3. なぜポリープ切除が大腸がん予防につながるのか?
大腸がんの多くはポリープから発生する
大腸がんの多くは、腺腫(adenoma)という良性ポリープが時間をかけてがん化することで発生します。そのため、ポリープの段階で切除することで、大腸がんの発生を防ぐことが可能です。
内視鏡検査で高リスク病変を早期発見
内視鏡検査を受けることで、サイズが大きいポリープや形がいびつなものなど、がん化のリスクが高い病変を早期に見つけて切除できます。
定期的なフォローアップで新しいポリープの発生を監視
ポリープを切除した後も、新たにできるポリープを早期に発見し、再びがんになるリスクを低減するために、定期的な内視鏡検査が推奨されます。
4. まとめ:大腸がん予防のために一度は内視鏡検査を
これらの研究結果から、内視鏡的ポリープ切除が大腸がんの発生リスクを大幅に低下させることが明らかになっています。
- ・米国のNPS研究では、大腸がんの発生率が76~90%減少
- ・日本のJPS研究では、大腸がんの発生率が約86%減少
- ・ポリープを早期に発見・切除することで、大腸がんの予防が可能
大腸がんは早期に発見すれば、ほぼ100%治癒が可能な疾患です。
ご自身やご家族の健康を守るために、ぜひ一度は大腸内視鏡検査をご検討ください。
参考文献
【1】Winawer SJ, Zauber AG, Ho MN, et al. Prevention of colorectal cancer by colonoscopic polypectomy. N Engl J Med. 1993;329(27):1977-1981.
【2】Sano Y, Hotta K, Matsuda T, et al. Colorectal cancer incidence and mortality in patients undergoing colonoscopic polypectomy: A large-scale, long-term cohort study from Japan Polyp Study (JPS) Group. Clin Gastroenterol Hepatol. 2023.